公開標準様式

ステーブルコイン入金証憑・標準様式 v1.1

v1.1
更新日
起草
Sen(Soroi 開発者)
ライセンス
CC BY 4.0

出典表示のみで、誰でも・どのツールでも自由に採用・改変・再配布できます。

1. この様式は何か

ステーブルコイン(JPYC・USDC・USDT など)で売上を受け取ったとき、「この入金は、どの請求書に対する、誰からの、いくらの入金か」を後から誰でも確認できる形で残すための記録様式です。

銀行振込なら通帳や振込明細が証憑になります。ステーブルコイン入金には、それに相当する定型の証憑がまだありません。取引はブロックチェーン上に永久に記録されているのに、経理・税務の実務でそのまま使える形になっていない。このギャップを埋めるのが本様式です。

本様式は特定のツールに依存しません。表計算ソフトと手作業でも作成できます。Soroi(soroi-beryl.vercel.app)は本様式の参照実装(照合を確定すると様式どおりの証憑と索引が自動生成されるツール)という位置づけです。JPYC 以外の円建てステーブルコイン(信託型を含む)が登場しても、発行体・チェーンに依存しない項目設計のためそのまま適用できます。

2. 様式の定義

2-1. 必須項目(入金1件=証憑1枚)

ステーブルコイン入金1件の証憑は、次の項目をすべて含みます。

#項目内容・記録ルール
1証憑番号一意の番号。採番規則は 2-3 参照
2トランザクションハッシュ入金トランザクションの tx ハッシュ全文
3チェーン使用したブロックチェーン名(例: Ethereum / Polygon / Base / Avalanche / Kaia)
4ブロック時刻取引がブロックに取り込まれた時刻。タイムゾーンを明示する(UTC 推奨)
5トークン種別と資産区分トークンのシンボル(JPYC 等)と、資産区分(電子決済手段/外貨建電子決済手段/暗号資産のいずれか)。区分の判定が確定していない場合は、確定させずに「要確認」「分類未確定」の旨をラベルに残す
6数量受け取ったトークン数量(decimals 適用後の実数量)
7円換算レート・出典・取得時刻1トークンあたりの円レート、レートの出典(例: 券面額 1 JPYC = 1円/CoinGecko 日次履歴価格)、レートを取得した時刻。取得できなかった場合は空欄とし「レート未取得・手動確認要」と注記する。推定値で埋めない
8相手先送金元ウォレットアドレス全文と、対応する請求書上の取引先名
9請求書対応照合した請求書の識別子(請求書ID等)・請求金額・通貨・支払期日
10検証方法チェーンエクスプローラーで当該トランザクションを開く URL(3章参照)

第7項が本様式の核のひとつです。円換算レートの出典はトークンによって異なり得ます(券面額を出典とする場合も、取引日の市場レートを出典とする場合もあります)。本様式は、どちらを用いるべきかを判定しません。求めるのは「いくらのレートを・どこから・いつ取ったか」を残すことだけです。これにより、後から税理士が換算根拠を追試できます。

2-2. 推奨項目

必須ではありませんが、照合の経緯を再現できるようにするため次の記録を推奨します。

2-3. 証憑番号の採番規則

証憑番号は「接頭辞-日付-一意サフィックス」の形式とします。日付は入金のブロック時刻(UTC)の年月日8桁、サフィックスは照合レコードの一意IDに由来する固定値とし、同じ入金からは常に同じ番号が再現される(決定的である)ことを要件とします。参照実装では SRE-YYYYMMDD-XXXXXXXX(SRE = Soroi Evidence、末尾は照合IDの先頭8桁)を用います。他ツールが採用する場合は接頭辞を自社のものに置き換えて構いません。電帳法実務で慣行的な「日付+一意番号」のファイル名規則に添う設計です。

2-4. 索引簿(証憑索引CSV)の列構成

証憑1枚ごとの記録に加えて、全証憑を一覧できる索引簿を CSV で備えます。列は次の順とします。

  1. 連番
  2. 取引年月日
  3. 取引金額(円)
  4. 取引先名
  5. 通貨
  6. 数量
  7. 円換算レート
  8. レート出典
  9. レート取得時刻
  10. 資産区分
  11. 証憑番号
  12. txハッシュ
  13. チェーン
  14. 相手先アドレス
  15. 請求書ID
  16. 請求書金額
  17. 請求書期日
  18. 照合ルール
  19. 照合日時
  20. 証憑ページ
  21. 備考

連番に続く3列(取引年月日・取引金額(円)・取引先名)を検索キーとして先頭に固定するのが要点です。円換算できない行は取引金額(円)を空欄にし、備考に「レート未取得・手動確認要」と記します(数量や 0 を円額として偽装しない)。日付は YYYY/MM/DD 形式とし、表計算ソフトが日付型として解釈できるようにします。索引簿の末尾には、本記録が機械的照合の下書きである旨の免責行を残します。

3. 検証可能性 — 誰でも追試できる証憑

本様式の証憑は、発行者を信用しなくても第三者が原本を検証できます。銀行明細にはない、ブロックチェーン固有の性質です。

手順は次のとおりです。

  1. 証憑記載のチェーンに対応する公開エクスプローラーを開く(Ethereum なら Etherscan、Polygon なら Polygonscan など。証憑には検証用 URL を直接記載します)
  2. 証憑記載のトランザクションハッシュを検索する
  3. 表示された取引の「送金元アドレス・トークン種別・数量・ブロック時刻」が証憑の記載と一致することを確認する

この3手順で、税理士・税務調査官・取引先の誰であっても、入金の事実そのものをブロックチェーン上の原本と突き合わせられます。証憑側で改ざんや誤記があれば必ず不一致として現れます。円換算レートについても出典と取得時刻が記録されているため、同じ出典の履歴データに当たれば換算の妥当性を追試できます。

4. 制度整合の根拠

4-1. 電子帳簿保存法の検索3要件

電子取引データの保存には、(1) 取引年月日・取引金額・取引先で検索できること、(2) 日付または金額の範囲指定で検索できること、(3) 2以上の項目を組み合わせて検索できること、が求められます(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」)。本様式の索引簿は、この3項目を先頭列に固定した CSV です。表計算ソフトで開いてフィルタをかければ、範囲指定検索も組合せ検索もそのまま成立します。これは国税庁が同一問一答で例示する「索引簿方式」(Excel 等の一覧表で検索機能を確保する方法)に合わせたものです。

4-2. 資産区分に関する公表資料の所在

資産区分によって会計・税務の取扱いが変わるため、本様式は資産区分を証憑の必須項目に置いています。ただし、 どの区分に当たるかを本様式が判定することはありません。 本様式が求めるのは「どの区分だと考えて記録したか、その判定が確定していないならその旨」を残すことだけです。

判定の拠りどころとなる公表資料の所在は次のとおりです。円建てステーブルコインのうち資金決済法上の電子決済手段に当たるものの会計上の取扱いについては、ASBJ 実務対応報告第45号が公表されています。USDC・USDT 等については、外貨建電子決済手段と暗号資産のどちらに整理されるかで扱いが分かれ得るとされています。暗号資産の税務上の取扱いについては、国税庁が「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」を公表しています(版が改まることがあるため、参照の際は下記リンク先で最新版をご確認ください)。 自社の保有するトークンがどの区分に当たるか、そしてその区分でどう処理するかは、税理士・会計士の判断領域です。 本様式は判定に迷いが残るトークンについて、確定させずに「要確認」「分類未確定」の旨を区分ラベルに残すことを求めます。

一次情報

5. ライセンスと採用のお願い

本様式は CC BY 4.0 で公開します。会計ソフト・消込ツール・取引所・税理士事務所のひな形など、どなたでも自由に採用・改変・再配布いただけます(出典として本様式名の表示のみお願いします)。ステーブルコイン経理の現場に必要なのは様式の乱立ではなく共通の型だと考えています。他ツールでの採用はむしろ歓迎です。項目追加のご提案もお寄せください。

6. 免責

本様式および本様式に基づく証憑は、ウォレット入金と請求書の機械的な照合結果の記録(下書き)であり、会計・税務上の適格性を保証するものではありません。資産区分・円換算・勘定処理の最終判断は、必ず税理士・会計士の確認を前提としてください。

この様式どおりの証憑が出てくるところ

Soroi は本様式の参照実装です。照合を確定すると、上の必須項目がそろった証憑と索引簿が自動で生成されます。サンプルデータの画面を、登録なしでご覧いただけます。

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